紀伊半島の環境保と地域持続性ネットワーク 紀伊・環境保全&持続性研究所(三重県津市)
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  <紀伊半島の巨木を訪ねる>

 三重県松阪市清水町の大トチノキ

 三重県清水町の大トチノキは、櫛田川の堰堤から遠望されるが、白く枯れた大枝数本が目立つ。集落の裏手の木立の中に大トチノキは立っていたが、主枝は樹皮が剥がれて木部が白くむき出しになっていて、葉が1枚もなかった。折れて落下した太い枝が幾本か地面に横たわり、ぼろぼろになっていた。樹の下に立って、巨木の死を確認したときに、数百年続いた生命がここ数年のうちに尽き果てたのかと思うと、何とも言えず厳粛な気持ちになった。

 近くで農作業している老婦人に聞くと、この大トチノキは、松阪市の天然記念物の指定を受けて間もなく、雷に打たれ、そのあと枯れ始めたとのことである。また、子供の頃に、このトチノキの実で笛を作って遊んだり、トチモチを作って食べたと、思い出話を語ってくれた。

 この大トチノキは、古い民家の裏手の雑木林の中にあって、乾燥にさらされたりすることもなさそうだし、病気にでもかかったのかなと想像したり、何故枯れてしまったのか不思議であった。落雷による主幹の亀裂は見られていないが、植物も過大な電流や電圧によって枯死するのだろうか。樹木の専門家に見解をお聞きしたいところだ。ちなみに、アカマツの松枯れを防止する手段の1つとして、内部のマツノザイセンチュウを電撃で駆除する方法がある。

 いずれにせよ、数百年、千年の巨木といえども、私たちの時代に枯死してしまうという危機はいつも隣り合わせだと思う。地域住民の日頃の見回りや、定期的に樹医の検診を受けて、鈴鹿市南長太町の大クスのように、適切な対策をとっていくことが必要だろう。

 枯死した巨木の周りには、その実から生えたであろう数本の若木が生育している。親木と同じように巨木に生長して欲しいと願う。あえて、枯死した巨木を掲載することにより、自然遺産を守ることの難しさを再認識し、この巨木の鎮魂文としたい。

(写真をクリックすると拡大します)
 大トチノキを遠くから見ると、白骨化した大枝が四方に伸びている。
 大トチノキに近づいて見ると、太い幹の樹皮が少しずつ剥がれかけている。
 上を見上げると、白骨化しつつある主枝が見える。
 大トチノキの根元から数m離れたところに、トチノキの若木(右手前)が生育していた。この他にも数本、もっと小さな若木が生えていて、そのうちの小さな若木には保護か目印のためか、傍らに棒が立てられていた。正面奥に、大トチノキの幹が見える。

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